青騒-I SAY LOVE-
クシャクシャに顔を顰めて、五木さんを罵って、自分の弱さと利用されそうになった現実に挫折して、それでも泣かないよう手の平をしっかり結んでいる。
その姿はあまりに痛々しく、あまりに儚げだった。
その場で項垂れているケイさんは本当に消えてしまいそうなほど、痛々しい姿をしていた。
私は垣間見てしまう。
彼が泣かないように努力している、その努力が一粒二粒三粒、ゲームセンターのフロア床に零れ落ちるのを。
(どうしよう…、ケイさん、泣いてる。五木さんも、黙ったままだし)
打ちひしがれているケイさんに、五木さんに、なんて声を掛ければいいんだろう。
五木さんだって好きに襲われたわけじゃないし、ケイさんだって好きでフルボッコにされたわけじゃないし、舎弟に誘われたことだって…ヨウさんが有名過ぎるから、狙われても仕方が無いし。
でもでも元気出してください、なんて安易に言えないし。
五木さんと大暴れした後のケイさん、何だか電池の切れたロボットみたいにピクリとも動かない。ただただ項垂れて、その場に俯いてる。
見かねたヨウさんが、膝を折ってケイさんに話し掛けた。
「ケイ…、ヤマトの舎弟のことだが…。俺は気にしちゃねぇ。それより、テメェが怪我をしてる方が」
「はは…、怪我とか…当然だろ。俺は…、それだけのことをしたんだから。はは…馬鹿だっ。俺は馬鹿だ…。超お馬鹿」
ふと項垂れていたケイさんは、自嘲を零してゆっくりと腰を上げた。
そして傷付いた体に鞭打って、「馬鹿だ」繰り返して自嘲。ふらふらーっと何処かに歩み出してしまう。
「お、おいケイ!」
ヨウさんが慌てて後を追うけど、ケイさん、無視して歩みを進める。
「ケイ!」
モトさんも前に出るけど、軽く体を押して、脇をすり抜けてしまう。
結局、ケイさんの歩みを止められず…、ヨウさんが追う形になったけれど…、なんだかすっごく三階フロアの空気が悪くなってしまった。
取り敢えず怪我人の五木さんに声は掛けるけど、五木さん、呆けに近い顔でスロットマシーンの椅子に腰掛けて自分の世界に閉じこもってしまう。