青騒-I SAY LOVE-
声掛けても上の空だし、今のあいつじゃ、俺の話をろくすっぽう聞こうとしない。

でも頭冷やしたいからって気丈に言葉を返してくる。

意外と負けず嫌いでプライド高いヤツみたいだ、ケイは。五木との喧嘩を見ていたらよく分かったよ。
 

ヨウさんは失笑を零して私の肩をトントンと叩くと、三階へ戻ろうと態度で指示。踵返して三階に続くエスカレータに歩み始める。


私はヨウさんの背中を追い駆けようと足を一歩前に出した。

だけどすぐに立ち止まって、ケイさんに視線を投げる。

日賀野さんに利用されそうになった現実に打ちひしがれているケイさんは、ただただ苦い顔をして顔を顰めていた。


―…掛ける言葉を見つからないや。私は瞬きを一つして、彼に背を向けた。
  
 
 

翌日。
 
ゲームセンター三階フロアを訪れてみると、そこにはケイさんの姿があった。

日賀野さんにフルボッコされたり、五木さんと大喧嘩したり、散々な目に遭ったケイさんだから、今日は姿を現さないんじゃないかって憶測していたんだけれど、見事に外れちゃったみたい。

学校を終えたケイさんはいつもどおり、ヨウさん達とゲームセンターに足を運んでいた。

顔を出したケイさんの姿は至って元気。まさか昨日の今日で立ち直ったのかな?
だったら驚異的ハートの持ち主だなぁ。

私だったら三日三晩は落ち込んで食欲不振になるのに。
 

そう思っていたんだけど、様子を見守っていたらケイさん…、やっぱり昨日のことを引き摺っているのか、あんまり皆と積極的に会話に加担しようとはしていなかった。

 
ヨウさんやワタルさんにエアホッケーを誘われても、微苦笑を零してパス。

モトさんに二階の格闘ゲームに誘われても、やっぱりパスしてスロットマシーンの椅子に腰掛けていた。

一人でぽつんと椅子に腰掛けている姿を見ると、何かしなきゃ、声を掛けなきゃって思う。

以前ヨウさんが私にしてくれたように、お友達がポツンと一人ぼっちになっていたら声掛けして、さり気なく励まさないと。

ヨウさんみたいにできるか分からないけど、何かしてあげたい気持ちがある。
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