青騒-I SAY LOVE-
ゆっくりと振り返れば、仁王立ちしている響子さんと失笑を零している弥生ちゃんの姿。
「ワータール!」
ココロの今の発言は何だ! 何しやがったっ!
響子さんは怒声を上げながら、ずんずんぐっわしぐっわしと足音を鳴らしてこっちに歩んでくる。
ワタルさんは軽く両手を挙げた後、私にこっそりと耳打ちしてオレンジ髪を翻(ひるがえ)す。
颯爽と逃げるワタルさんを響子さんが追い駆け回す中、私はワタルさんの言葉を反芻して呆けていた。
何度も何度も言葉を呟いて咀嚼、ぎこちない足取りで場所を移動する。
向かう先は二階フロア。
格闘ゲーム機の一つを陣取っている男子生徒三人組を見つけ、私は恍惚に彼等を、彼を見つめる。
「あ…、すんません。ヨウさん。またオレ勝って…、だ、だけど見事な手さばきだとは思います!」
「……、いやー圧倒的だっただろ。これは。ヨウ、俺等との対戦で全敗だな。七連敗」
「………っ~~~っ! 次は勝つっ、俺は諦めねぇ!」
「マージかよ。もうやめとけって。ゲーム歴があるないじゃ腕も違うって」
「負けっぱなしとかジョーダン! ケイ座れ!」
ぶっすりむっすり不機嫌な舎兄さんの言葉にヤレヤレと肩を竦めて、椅子に腰を掛ける彼。
私は物陰からこっそりと彼の横顔を見つめていた。
「ヨウさん頑張って下さい」モトさんの声援と、
「加減なしだぞ」ヨウさんの負けん気。
それから、
「本気でいっきまーす」
彼の笑声交じりの台詞。