クロトラ!-妖刀奇譚-
そんな客の言葉に、ワサビは苦笑して手を振った。
「俺は情報屋じゃねえ。情報屋の"耳"に過ぎない、ただの下っ端さ。」
ワサビは、弁当屋のかたわらこの手の裏社会の情報を売っている。
だがそれは"情報屋"を名乗れるほど質の高い仕事ではない。
大抵の場合、屋台を出して町で拾い聞きしたちょっとした情報や噂を、元締めである"情報屋"に安価で売る。
ときには"情報屋"から仕事を回されて聞き込みやら何やら、隠密の真似事もする。
"情報屋"の顔も知らない、文字通りの下っ端に過ぎなかった。