クロトラ!-妖刀奇譚-

――賊だ。


久坂は切っ先が当てられた首筋から、寒気が広がっていくのを感じた。




「お前、警官だな?」



背後の賊が言う。


それは暗闇にはばかるようなかすかな声だったが、鋭さを持って久坂の耳を打った。




「だ、だったらなんだと言うのだ」



答える声がみっともないほど震えた。



(…もしや、反政府派の者か!)



連中の中には、役人というだけで憎んでいるような輩もいるという。

もしそんな賊なら…切っ先がこのまま久坂の喉笛を貫くか、かどわかされて人質にされるか…




いずれにせよこのまま無事では帰れまい。






「な、何が目的だ?!金か?」


「金など要らない。」


全身に冷や汗をかきながらベタなセリフを叫んだ久坂に対して、賊は冷淡に返した。





そして、不思議な言葉を久坂に投げ掛けた。






「――お前、"クロトラ"を知っているか?」






< 28 / 49 >

この作品をシェア

pagetop