【完】天体観測 ~キミと見た星~


『わかった。私、頑張るよ。だから椎名も頑張ってきて』

「…おぉ」

俺は優木との電話を切り、自分の部屋を出て、隣の部屋をノックする。

「はーい」

中からは姉貴の声がする。
俺はドアを開けて、中へと入る。

そこには、ピンクのベッドに寝転がっている姉貴。

「あれ?翔太?どうしたの。早起きじゃん」

姉貴はベッドからゆっくり身を上げ、座る。
俺は、ドアの前にいたまま、話す。

「俺さ…今から行って来るよ」

「え?」

「大切な奴んとこ」

「…あぁ。鈴原さん?だっけ。」

俺はちゃんと姉貴に言っておきたかった。
だって、姉貴のおかげでちゃんと決心出来たから。

「その鈴原さ…。病気なんだ」

「え?」

「脊髄小脳変性症っていって、もう助からない病気なんだ」

「……」

姉貴は相当驚いたのか、声も出ず、ただ目を大きく見開くだけだった。

「それ…本当?」

「だから、今しかないと思う」

「あんた…それならもっと早く行きなさいよ!迷ってる暇なんてないじゃない!」

たしかに。
俺は、迷ってる暇なんてなかったんだ。

「うん…」

「…早く行って来なさい。走って」

俺は姉貴の部屋を後に、家を出た。



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