【完】天体観測 ~キミと見た星~
「――――……っ」
病室の前。
俺は、乱れた呼吸を直す。
そして、ゆっくりとドアをノックする。
心臓の音が今ならハッキリ分かる。
―ガラガラ―
扉を開けると、そこには背を向けて寝ている鈴原が居た。
あの時と同じだ。
だけど、今度は違う。
「鈴原」
そう俺が声をかけると、鈴原の方が一瞬上がった。
そして、ゆっくりと鈴原がこちらを振り向く。
「…椎名…くん?」
よく見ると、鈴原の頬に涙が流れていた。
あぁ
鈴原だ。
「どうして…椎名くんが…」
木下はいないのか、俺と鈴原二人っきり。
「俺、お前に本心ぶつけに来た。」
「え…」
「今から言う事、黙って聞いてくれ。」
「……」
鈴原は俺を追い返さずに、黙って俺の話に耳を向ける。
「俺は、正直お前の病気が怖い。いつ鈴原が居なくなるかと思うと、本当に怖くなる。だけど、俺はそれに向き合いたい。お前が大事だから。ちゃんと、鈴原の傍に居て、鈴原を守りたいんだ。突き放されても、その想いは変わらない。
だから、鈴原の本心のぶつけてくれ。俺はちゃんとそれを受け止められる。一人で勝手に悩んで勝手に決めないでくれ。俺はそれが一番つらい。」
俺が話している間。
鈴原の目から何滴も涙が零れ落ちていた。