【完】天体観測 ~キミと見た星~
―星夏side―
「はっ、笑わせるなよ。君はどっちが大切なんだよ…っ」
木下くんは、泣きそうな瞳でそう言った。
私は本当に最低だ。
こんなに…想ってくれる人がいるのに、自分の都合で振り回して、傷つけて。
木下くんにはいくら謝っても、申し訳ない。
「選べないよ。私は、二人を選んで良いような人間じゃない。」
矛盾してるから。
傷つけて、突き放して。
その度にまた、甘えて、傍に居てほしいと思う。
「星夏ちゃん…俺は、コイツみたいな軽い想いじゃない。コイツは、ただ同情で傍に居るだけだ!」
そう言って椎名くんを指さす木下くん。
良いの。
それでも…傍に居てくれるなら。
それだけ良いの。
「木下くん。私ね、”椎名くんは大切だけど、木下くんは大切じゃない”なんて、言ってないでしょ?私は…“椎名くんも大切で、木下くんも大切”なんだよ」
「……っ」
「ごめんね。我儘で。だから、選べない」
たった一人。
たった、病人一人の為に。
たった…こんな人間の為に。
私は色んな人を傷つけた。
そして想い知るの。
椎名くんも大切で。
美冬も大切で。
木下くんも大切で。
皆欠けちゃイケない大切な人たちなんだって…。