【完】天体観測 ~キミと見た星~


「木下くん…木下くん…」

個室に運ばれた木下くんは、軽く息をしてるだけで、動かない。

その木下くんの手を握って、ただ、名前を呼ぶ事しか出来ない私。
なんで

どうして自分は何も出来ないんだ?
どうして、こんなにも無力なんだ?

「木下…起きろよ…」

椎名くんも、木下くんを心配そうに、見つめる。



「親族の方がいらっしゃいました!」

三十分近く、木下くんの手を握っていた。
すると、木下くんのお母さんやお父さんとみられる人たちが、慌てて入って来た。

私と椎名くんはそこを静かにどく。
本当は、ずっと手を握っていたかった。

「涼介…っ!涼介…目を…開けて…っ」

私の心臓がドキンと大きく波打つ。

木下くんのお母さんは泣き叫ぶ。
…聞いていられない声で。

そのお母さんを、木下くんのお父さんが優しく撫でる。

私だって耐えられない。
こんなの、夢であってほしい。

その時はまだ、急すぎて
実感が湧かなかった。



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