【完】天体観測 ~キミと見た星~


「…がぅ…」

その時、
たしかにベッドの方から声が聞こえた。


「涼介…っ!?涼介っ大丈夫なの!?」

「違うよ…」

木下くんは、動かない口を一生懸命動かそうとしていた。

「…せい…かちゃ…は…悪く…な…ぃよ」

その言葉は、私を守ってくれる優しい言葉だった。

「木下くん…」

木下くんはどこまでお人よしなんだ。
どうして最期まで、私を守ってくれるの?

「せいかちゃ…ん」

木下くんにそう呼ばれて、私は車椅子を押し、木下くんに寄る。

「木下くん…」

「星夏ちゃん…俺…は、しあ…わせ…だったから…悔いは…ない…よ」

そう言って、木下くんはゆっくりと腕を伸ばして、私の頬を触ってきた。

木下くんの手は暖かくて、もう死んじゃうなんて、思わなかった。

「大好き…だよ…。この病院に来れて…君に会えて…初めて…椎名くんというライバルも出来た…。しあ…わ…せ…だったよ…」

きゅうって胸が締め付けられて、
鼻がツーンと痛くなった。

「木下くん…私も…大好きだよ…だからお願い…逝かないで…っ!」

「ふっ…それは無理だよ…。もう限界…みた…い」

木下くんは笑いながらそう言った。

私の視界がどんどん歪む。
どんどん霞む。


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