【完】天体観測 ~キミと見た星~


「どう…して…?」

わけがわからなかった。
だって…だって。

木下くんはもういないんだよ…?

「鈴原…?どうした?」

「メールが…」

あぁ…そっか。

送信日は
12月4日。

…亡くなる前だ。

私はゆっくり、深呼吸して、その未封筒のメールを開く。

≪俺、好きだよ。嬉しそうに笑ってる星夏ちゃん≫

短い文章だった。
だけど、それだけなのに。

「…うぅ…っう…」

たくさんの涙が流れる。

「鈴原?どうしたんだよ…っ」

椎名くんは慌てて私の背中をさすってくれる。

「木下くんが…木下くんが…」

私は椎名くんに木下くんからのメールを見せた。

「…ははっ…アイツもカッコいいことするな」

笑ってた椎名くんだけど、瞳からは今すぐにでも涙が溢れそうだった。

木下くん。
こんなの…反則だよ。

「椎名くん…」

そして、私は決める。

「私…ちゃんと生きるよ。最期まで頑張って頑張って…笑って生きるよ」

笑ってそう、椎名くんに言った。

「…おぅ…俺も、傍でちゃんと見守るからな…」

震えた声でそう言った椎名くん。

木下くん…
ねぇ、聞こえてる?

私ね、木下くんも椎名くんも大好き。
だけど、椎名くんへの想いの方がきっと強かったと思う。

だから、我儘な私だったから…
たくさん木下くんを傷つけた。

ごめんね…ごめんなさい。

そうやって、これから謝って生きてくのが私の運命だって分かってた。


でも…木下くんからのメールで、私はすごく救われた。

「今を生きよう。楽しく生きよう」って強く思えた。

ありがとう…ありがとう。

私はこれから、頑張って生きて。笑って生きて。木下くんに感謝しながら生きるよ――…


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