【完】天体観測 ~キミと見た星~
病院から学校はそんなに遠くはない。
だけど、車椅子だから、少しいつもより時間がかかった。
「もしもし?俺だけど…そう、うん。…じゃあよろしくな」
歩いてる時、椎名くんは、私の車椅子を押しながら、誰かと電話をしていた。
私はあえて気にせず、
そして、着いた学校。
生徒はほとんど下校していた。
「…学校だ…」
久しぶりだったから、私はすごく感動した。
どうしよう。
すごく、嬉しいよ。
だって、私の我儘がこんなに早く…叶うなんて。
「先に外まわる?」
「うんっ」
生温かい風が、すごく、すごく気持ちいい。
運動場、体育館、体育館裏。
車椅子で行ける範囲の所は全てまわった。
「椎名くん…なんか…涙でそう…」
「ははっ」
だって、すごく思い出すんだもん。
運動場で、走ったこと。
体育館での朝会。いつも校長先生の話が長かったこと。
私は皆より、学校にいる時間は少なかったと思う。
だけど、その分。
私の心にはしっかり少なくも深い想い出が刻み込まれてあるんだ。