【完】天体観測 ~キミと見た星~
「それじゃ、椎名くん。今日もまた、星夏をよろしくね」
「はい」
お母さんにお別れして、私と椎名くんは病院を出た。
散歩も含めて、海へと歩く。
「ねぇ、どこの海行くの?」
「んー。名前知らないけど、綺麗な海だったよ」
「一回いった事あるの?」
「うん。家族と」
そっか。
椎名くんが、家族と行った所に私も行くんだ。
そう考えただけで、顔が笑顔になってしまう。
海だから、かなり遠いのかな、って思ったけど…。
数十分歩いただけで、海は見えた。
「わぁ…っ!こんな所があったんだ…」
何年もこの近くに居たけど、全然気付かなかった。
すごく、新鮮。
「穴場なんだ。良いだろ?」
「うん!」
そして、もっと足を進めてくと、海へついた。
ちゃんと砂浜もあって、私たちは車椅子をその近くに置く。
それからは、椎名くんのおんぶで海へと近づく。
「椎名くんにおんぶされるの何回目だろ~」
「ははっ」
「…でも…落ち着く」
すごく、落ち着く。
広いからかな?温かいからかな?
よくわかんないけど、落ち着く。
ゆっくりと、降ろしてもらって、砂に足をつける。
「大丈夫?」
「うん」
そしてそのまま、座る。
気持ち良い~。
足を延ばして、海へとつける。
「つめたいっ」
海の水は、すごく冷たかった。