【完】天体観測 ~キミと見た星~


「美冬…?」

思わず心配になって声をかける。

「ん~?」

美冬はこちらを向かないまま、返事を返す。

「どうしたの…」

「えっ?なにがー?」

「………」

「なによ急に~!」

「なんでもなーい」

美冬はそれからしばらく、
こちらを見ることはなかった。

けど、なんとなくわかった。

泣いてるんだろうな…。

その涙が、どの意味の涙なのか、私はわかってる。

「明日。椎名くんと天体観測するんだ」

「…そっか!良かったね」

「うん。後ね、卒業したら、もう一度、綺麗に見える所でまた天体観測するの」

「はははっ、天体観測しすぎ!!」

美冬はそういって笑う。

「うん…。天体観測大好きだからね」

私はなぜ、わざわざ美冬に天体観測することを言ったのだろうか?
ただ、一緒に喜んでもらいたかっただけ?

「あ~明日…楽しみだなぁ!!」

そう言った時、私の視界は霞む。揺らぐ。

そして、ベッドからそのまま床へと体が落ちた。

美冬の背中が、空しく映る。

あ…
そっか

私、持病あるんだっけ。

幸せすぎて、忘れるところだった。

「え?…ちょ!星夏っ!!?」

倒れた私に気付いた美冬はすぐに駆け寄ってきて、ナースコールを押す。

「星夏!!しっかりして!!大丈夫っ!!?」

美冬の心配してくれてる声で、私は後悔した。

…後悔した。


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