【完】天体観測 ~キミと見た星~
―ガチャリ
少し重い扉を椎名くんが開ける。
すると、私たちを冷たい風が出迎える。
「うぅ~!さむいねっ」
「そうだな。膝かけとか持ってくればよかったな」
そんな事を言いながら、私たちは屋上のど真ん中に止まった。
「うわぁ~!星、綺麗に出てて良かったね!」
「あぁ、本当。結構出てんじゃん」
空を見上げると、無数の星。
その星は、決して数えられない。
「久しぶりだなぁ…天体観測」
「俺と初めてした時以来?」
「うん」
この星たちを見て私はますます星が大好きになって。
天体観測も大好きになった。
「あ!椎名くん!!」
「ん?」
「あれ見てっあの星」
そう言って、私は輝く一つの星を指す。
「ん?」
「あれはね、ぎょしゃ座って言うの」
「ぎょしゃ座…?」
「そう。それで……あっ!あれは有名な冬の大三角!知ってるでしょ?」
「冬の大三角は有名だよな。知ってる知ってる」
「冬の大三角は、こいぬ座。おおいぬ座。オリオン座。…綺麗だよね」
「あぁ。…っつっても俺には全部同じ星に見えるんだけど」
「ええ~っ」
苦笑する椎名くんに、私も笑う。
この星は、一生忘れないだろう。
この風も。この温度も。この匂いも。全部忘れない。
「椎名くん…」
「ん?」
「星、綺麗だね」
「ああ」
「好きだよ…」
「……え?」
「………」
「…え…ああ。星が、ね」
椎名くん、星も好きだけど…
それより椎名くんの方が大好きだよ。