【完】天体観測 ~キミと見た星~
それからしばらく、なにも喋らず俺は星を眺めていた。
鈴原と、今も手は握ったままだ。
だが、俺の手は段々冷たくなる。
指先から、じんわりと…。
「鈴原、寒くねぇ?」
ふと、そう言いながら、鈴原の方を見た時…。
「………」
鈴原は、微笑んで、幸せそうに目を閉じていた。
鈴原の冷たい手。
鈴原の目を閉じてる顔。
「…鈴原…?」
その時。
俺の頬に涙がスルリと流れる。
「なんだよ…。鈴原。寒くないのか?なに寝ちゃってんの?」
わかってた。
わかってるよ。
俺は、冷たくなった鈴原の手を、より強く握り、もう一度空を見る。
なぁ、鈴原。
星、すごい出てるぞ?
こんなに出てるなんて、めずらしいじゃん。
目を閉じてたら、真っ暗だろ?
なにも見えないだろ?
目、開けてみろよ…。
だけど、鈴原の目が開くことは決してない。
そう考えれば考えるほど、俺の目に涙があふれる。
「なんで…だよ…っ」
なんでだよ。
なぁ?
誰か、教えてくれ。
なんで…
どうして…
今なんだ?
まだ、天体観測の途中だぞ?
結婚だって式まだあげてねぇし。
病院の屋上じゃない天体観測だって…まだなのに。
どうして
彼女なんだ。