【完】天体観測 ~キミと見た星~



「はい、服あげてー」

医師のその言葉と同時に私は服の前を軽くあげる。

「んー…はい。異常なしっ!しまって良いよ」

その言葉で服をしまう。


月に一度の診察が、毎日に変わってしまった。
このつまらない日々に、診察が加わるだけで、またつまらなくなる。

そうだ。

わかった…。


私は椎名くんといて、つまらなくなかったんだ。
楽しかったんだ。
椎名くんは私の“光”だったんだ。


だから、椎名くんのいない生活はつまらない。

椎名くんと喋って無くても、ただ会えただけで良かったのに。
見るだけで良かったのに。


「医師(センセイ)…、私いつか退院出来るの?」


もう椎名くんに会えないのかな?
前みたいに話せなくても良い、ただ見るだけで良いの…。


「んー、すぐ退院出来るよ」


医師は笑った。
看護婦さんも笑ってる。

なんで笑うの?
笑わないで。



「すぐって…いつ?」

「え?」

「すぐっていつなの!?本当はもう外に出れないんじゃないの!?」

私はベッドから起きあがって、医師に掴みかかっていた。


「ちょっっと!!星夏っ!落ち着きなさい…っ!!」

お母さんに止められたって、看護婦さんに止められたって、私は泣いて叫んだ。
助けを求めて。


「どうして私なの!?私は死んじゃうのっ!?」

泣いて泣いて顔はぐしゃぐしゃ。
でも、それでも私は知りたかった。
死ぬならそれで、もう一度椎名くんに会いたかったから。
こう思うのはおかしいのかな?
椎名くんとは、特別な関係じゃないけど、会いたいと思うのはおかしいの?


「星夏――…っ!!!!!」


病室に、泣き叫ぶお母さんの声が響いた――…





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