【完】天体観測 ~キミと見た星~
ホームルーム。
先生の話とチャイムが鳴り終わると、俺は机の横にかけてた鞄を手にとって、勢いよく教室を出た。
早く鈴原に会いに行きたかったから。
たぶん、俺は鈴原が好きなんだ。
わかってるんだ。
たぶんだけどな――…
俺は病室の前まで走って、一度足を止める。
そして、少し息を整えてから病室へと入る。
「よっ!鈴原~」
本当は最近疲れてる。
正直ゆっくり寝れてないんだ。
だけど、そんな疲れた顔、鈴原に見せてたまるもんか。
「あ、椎名くん…」
今日の鈴原は、いつもと違って、なんだか顔が沈んでた。
「どうかした?」
俺は、鈴原の横に椅子を出して、座る。
「…お箸、持てなくなっちゃったの」
眉を下げて笑う鈴原に、胸が痛んだ。
「…そっか。」
俺は、それしか言えなかった。
きっと、これからも、鈴原が失うものはいっぱいあると思う。
その度に、鈴原は傷ついて、俺も傷つくんだ。
俺には、その覚悟が…ある。
ちゃんと、覚悟は出来てる。
そのために、俺は鈴原といるんだ。
「大丈夫だよ」
擦れて消えてしまいそうな声で、俺はそう言った。