【完】天体観測 ~キミと見た星~





それからも、鈴原の病はどんどん進行していった。





「椎名くーんっ」

少し離れた所から、鈴原が笑顔でコッチへ小走りでやってくる。

「リハビリ終わった?」

「うん、ちゃんと出来――…」

鈴原の口が止まり、その代り、鈴原の手は尋常じゃなく震えてた。

え?
俺はなんで鈴原の手が震えているのか分からず、首を傾げた。

「……ご、ごめんね。」

鈴原はなぜか謝る。
なんで手、震えてるんだ?

「驚かしちゃってごめん。なんか勝手に手が震えちゃう事あるんだ」

また眉を下げて笑う鈴原。
その鈴原の無理矢理な笑顔が俺の心を掻き毟る。

鈴原が謝る理由がわからなかった。
お前は謝る事なんかしてないよ。

鈴原は必死で、震える手を隠そうとする。
それを見た俺は、鈴原の手をとって、強く握った。

大丈夫。
大丈夫だから。

そう強く想いながら。


< 63 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop