【完】天体観測 ~キミと見た星~
「屋上、行こうぜ」
「え、でも…車椅子は―…」
「前みたいにおぶって行けば良いじゃん」
子供のように無邪気に笑う椎名くんに私は笑っちゃった。
椎名くんは何も考えてないようで、一番考えてる。
尊敬しちゃうな。
「よいしょっと」
椎名くんはベッドから私をおんぶした。
「重いでしょ?ごめんねっ」
「全然。俺男だし」
扉へと足を進める椎名くん。
私は椎名くんの体を後ろから強く抱きしめた。
椎名くんが前向いてたら、抱き合ってるみたい…。
「ふふっ」
そんな馬鹿な事を考えて、思わず笑みがでる。
「ん?なに?」
「なんでもない」
私は椎名くんの温もりに嬉しくなって、顔をうずめた。
すると、ちゃんと椎名くんの匂いがして、安心するんだ。
「鈴原…、近い」
そう注意されて、ハッと目を見開く。
「あっ!ご、ごめんっ…」
「いや…別に良いけど…」
後ろから見た椎名くんは、たしかに耳が赤かったような…気がした。
椎名くんも、こんな私なんかに照れてくれてるのかな?