【完】天体観測 ~キミと見た星~
「いいなぁー、あの子たち…」
ある日の朝、木下くんは、窓から顔を出して、下を見ていた。
「どうして?」
木下くんが見ているのは、走り回っている子供たち。
元気よく走り回っている。
「俺さ、走っちゃダメなんだよね~」
「まいるよなぁ」と、下を見ながら言う木下くん。
「…そーなんだ」
案外、木下くんも大変なんだなって思った。
そして私は、木下くんから目を逸らし、さっき読んでた本にもう一度目を移す。
「…………」
「……読書好き?」
「暇だから読んでるらけ、かな。」
あれ?
なんでだろう。
“読んでるだけ”って言ったつもりなのに“読んでるらけ”になっちゃった。
「…………」
「………」
とくに会話の無い私達。
すると、木下くんは立ち上がって、私のもとへやって来た。
「…なに?」
「トランプしようよ」
それだけ言うと、自分のベッドに戻って、横に置いてある小さな机からゴソゴソと何かを取り出し、またこっちへ戻って来た。
「ほらっ」
取り出したものは、トランプだった。
私にトランプを見せて、にぃっと笑う木下くん。
木下くんの良い所は、その笑顔かもしれない。なんて思った。
「うん、しよっか」
私も笑って、本を片づける。