【完】天体観測 ~キミと見た星~
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「はい、俺あがりぃ~!」
持ってた一枚のトランプを机に雑にほる木下くん。
また…負けた。
「ていうか、ババ抜き何回目?」
さっきからトランプで遊んでいるのはババ抜きばかり…。
私も持っていた残りのトランプを机に置いて、溜息を一つ、ついた。
「だって俺、ババ抜きしか詳しくルールしらないもん」
「え~、あいえない」
「え?」
え…
また、私のろれつはちゃんと回らなかった。
“ありえない”そう言いたかったのに…。
「どうしたの?」
木下くんに聞き返されて、困る私。
「なんでもない」
そう言って、私は誤魔化した。
いや、誤魔化せてないと思うけど。
私はベッドから上手に車椅子に乗り移り、
「ちょっとトイレ」
それだけ言い残すと、木下くんを残して病室を後にした。
本当はトイレなんて行きたい気分じゃなかったけど、ろれつが回らず、ちゃんと言葉を言えなかった自分が情けなかった。
そして、そんな自分を木下くんに見られるのが、もっと恥ずかしかった。