【完】天体観測 ~キミと見た星~


その日の夜。
私は思い立ったらすぐに行動に出るタイプだ。
だから、椎名くんにメールを送った。

≪もう病院に来なくてイイよ≫

今考えると、本当に馬鹿だった。

携帯を閉じると、私は目を瞑る。
もう寝よう。

――――……

だけど、なかなか寝れなかった。
いくら目を瞑っても、やっぱり寝れなかった。
瞼が開けろ開けろと、騒ぐ。
でも、無理矢理でも寝たかった。
何かを考えるのが、怖かったから。

「星夏ちゃん」

すると、向かいのカーテン越しのベッドから、声が聞こえた。
私を呼ぶ声、それは木下くんだった。

「…なに」

お互い、ベッドに寝転んだまま、喋る。

「星夏ちゃんは、好きな人いる?」

突然の質問にビックリした。
どう答えて良いのかわからなかったから、私は無言。

「……」

「もし、いるなら…諦めた方がいいよ」

「え」

木下くんの予想外の言葉にビックリして、ついつい声を漏らしてしまった。

「やっぱり…。いるんでしょー」

「……」

「俺が言うのもなんだけどさ…。叶わないんだから」

「わかってる」

私はあえて冷静に返事をした。
わかってるもん。
それは、私が病人だからでしょ?

それから、木下くんはなにも言わなくなって、沈黙。
私はもう一度目を瞑る。



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