【完】天体観測 ~キミと見た星~
バイクなんてまだ持ってないし、自転車は荷物になるだけ。
俺は走って行くことにした。
そんなに遠いわけじゃない。
だから、少し走っていたら病院についた。
だが俺の息はあがってる。
不安や心配で、もう心臓が高鳴ってるんだよ。
「…………」
俺は鈴原の病室の前で、一旦自分を落ち着かせるため、大きく深呼吸した。
「…っ」
生唾を飲むと、病室の扉を開ける。
―ドキンドキン―…
その先には、いつものようにベッドに寝ている鈴原がいた。
「鈴原…」
俺は静かに鈴原に声をかける。
だけど、鈴原は無視するかのように、俺に背を向けた。
「…鈴原」
俺はもう一度鈴原の名前を呼ぶ。
だけど、鈴原は振り向かなかった。
いつもみたいに、笑顔で振り向けよ…。
ゆっくりと、鈴原のベッドに近づく。
すると鈴原は言った。
「来ないで良いって言ったのになんで来たの?」
その声は、いつもと違って、すごく低く冷たい声だった。
「…どうしてあんなメール送ったのか知りたかったから」
「そんなの決まってるじゃん。もう椎名くんなんて必要ないからだよ」
…………は?
俺は疑った。
コイツは…目の前にいる鈴原は、本当に鈴原なのか?