【完】天体観測 ~キミと見た星~
「わかったらもう帰って」
「お前…なんで急にそんなこと…っ」
「木下くんがいるから」
俺の声を遮るように、鈴原が大きな芯のある声を出した。
「…なんだよ…それ」
木下って…この間の奴だろ?
アイツがいるから俺は要らない?
…俺は…用無しって意味か…?
「鈴原…こっち向いて言ってくれよ」
俺はその時まで期待してた。
だけど…
鈴原はゆっくりこっちを振り向く。
そして、また芯のある声で言った。
「もう木下くんがいるから私は寂しくない。椎名くんは要らない」
鈴原は俺の目を真っ直ぐ見て言った。
もしかしたら、嘘かもしれない。
もしかしたら、また気を遣ってるのかもしれない。
そう期待してたんだ。
「そっか…」
だけど、それは単なる俺の勘違いでしかなかった。
「もう帰って」
目の前の鈴原は、俺の見たことのない鈴原だった。
俺は本当に期待していた。
これが嘘である事を。
俺と鈴原が一番近い存在だってことを――……