届かない、先生《短編》
「見んどけ」
森山先生だった。
私が泣きそうな面持ちで森山先生を見たら、頷いて
「大丈夫」
と言ってくれた。

根拠がない大丈夫も森山先生の口から聞いたものなら、とても嬉しかった。
だけど、安心感とやるせなさとで涙が落ちた。

森山先生は、ポケットからハンカチを出して
「隠しん」
と言って私の腕を掴み、歩き出した。

私達は、情報のコンピューター室に着いた。
森山先生は、数学と情報の先生なのだ。

「‥せんせぇ」
私が涙声で言った。
「どした?」
心配そうに私を覗き込む。

「秀くんが‥他の子と喋ってるの嫌だよ。けど、私は喋る勇気も告る勇気もないよ‥」
そう言った私の頬を森山先生はつねった。
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