届かない、先生《短編》
「なんであんなにグループ決まらんの?」
森山先生が心から不思議そうにきいた。

こんなとこで嘘つくのも不自然だし、私は本当のことを答えた。
「みんな一緒になりたい人がおるだよ」

「へえー。誰となりたいの?」
森山先生はすっごい楽しそうに私に聞いてきた。

「え‥秘密だし」
私は焦って言った。
「なんだあー」
森山先生はさっきから笑顔を絶やさない。

私はそんな森山先生を素敵だと、かっこいいとおもった。
森山先生の本当を私だけが知れたようで、なんとなく嬉しかった。

「まあ早く決めりんね」
森山先生はそう言って去って行った。

黒板の高いところは綺麗に全て消されていたのだ。
私の届かないところは、全て。
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