心友。~友達の彼氏をスキになった。~
ピロロロロローと電子音が鳴り、電車が発車する。
もう何本見送ったことだろう――
駅のホームのベンチに座り、悟は打ちのめされていた。
さっき、揺れる車両を移動してやっと藍を見つけたとき、彼女はドアの前に立ち尽くし、一人で泣いていた。
拭っても拭っても溢れてくるらしく、彼女の指の間を擦り抜けた涙の粒がポタポタとこぼれ落ちていた。
他の乗客に背を向け、藍は声も漏らさずに、でも確かに泣きじゃくっていた。
横顔が迷子の小さな女の子のようでいじらしかった。
藍は……時折震える指先で、その唇に触れていた。
どうしても…
声を掛けることが出来ずに、悟は藍の様子に目を遣りながら隣のドアの前にただ突っ立っていた。