籠のなかの花嫁
美羽の目的は自分にではなく、普段は全く話に出てこない美羽の友人へのプレゼントだった。




「友達にプレゼント?」


「はい」



友人とは、もちろん梨奈のこと。


実は、梨奈の誕生日がもうすぐなのだ。


高校で出会い、友達になってから梨奈は必ず美羽に誕生日プレゼントを贈ってくれた。



家族を失って以来、祝われなくなった誕生日。



いつしか、誕生日の存在を忘れるようになっていった美羽。



しかし、梨奈に誕生日を聞かれて答えて以来、誕生日を毎年忘れずに祝ってくれているのだ。




「大事な友人なんで、あたしも毎年必ず贈ってるんです」



何着も服を見ながら、真剣に悩む美羽。



今年は何をあげようか迷っていから、ここに来てちょうど良かったな。



『MICHELE』は梨奈の大好きなブランド。



きっと喜んでくれるはず。




自然と顔に笑顔を作りながら洋服選びをする美羽を見て、晴太は微笑ましく思う反面



俺の誕生日は、興味ないんだろうな・・・



と悲しくも思った。




晴太は当然ながら、しっかりと美羽の誕生日を把握し、プレゼントも考えていた。



この年になれば、祝われなくても構わないのだが、相手が愛する人となると、状況が変わってくるわけで・・・





「どうしよう・・・」



だが、そんなことが美羽に分かるはずはなく、ひたすら服と睨めっこの美羽。




そんな美羽に晴太は・・・




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