籠のなかの花嫁
だが、この状態は相手にとって極めて失礼なことをしている。



だったら────────




「理由は簡単です」



美羽は顔を上げ、真っすぐに晴太の顔を見て、言った。



「好きな人と聞かれて、真っ先に頭に浮かんだのが、晴太さんだったからです」



これは本当のこと。


嘘偽りは一切ない。


あたし自身だって、驚いた。


頭に浮かんだのが、あなたの笑顔だったから。




晴太は信じられないような表情のまま固まってしまった。




「・・・だけど、あなたを好きなのかはあたし自身、分からないんです。だから、話しづら・・・」



その瞬間、美羽は晴太の腕のなかにいた。



「せ、晴太さん!?」


「いいんだ」


「え?」


「気持ちが分からないなら、今はそのままで。美羽の頭に俺が出てきてくれただけでも、俺は嬉しい」


「晴太さん・・・」



乱暴な抱き締め方だったが、美羽は心地よく感じていた。



「俺は、お前をいつまでも待ってる。・・・愛してるから」



ドクン──────────



“愛してるから”その言葉に体は正直に反応する。




心臓が、鷲掴みにされたような感覚かな。


でも、温かくてずっとこうしてたい。




美羽は穏やかな気持ちに包まれ、全身を晴太に預けた。



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