籠のなかの花嫁
言いたい放題の同僚に晴太は地を這うような声で言った。



「てめぇら黙らねぇとその減らず口きけねぇようにしてやるぞ」



実は晴太は、空手の黒帯5段の有段者という一面も持っているのだ。



いよいよ本気で怒りだしそうな晴太に、同僚2人も冷や汗を流した。



だがそんな晴太に物怖じせず話す若林。




「何でそんなに機嫌悪いんだよ」


「あ?てめぇらのせいだろ」


「お前がこの程度で怒るか?いつもなら、無視して呆れてるだけだろ」



さすが付き合いが長いだけに、晴太の変化にはよく気が付くらしい。




「別に・・・いつもと変わんねぇよ」




だが、素直に頷けない晴太。


ならばと思い、若林は




「今日は飲みに行こうぜ」


「は?」


「俺も色々たまってんだよ。憂さ晴らしにさ!それとも今日も約束か?」


「してねぇよ・・・・・あぁ、分かったよ」



若林の気遣いにはすぐに気付いたが、今日は頼ることに決めた晴太。




今夜は家に帰るのも、気が引けるしな。




そう思いながら、晴太は胸ポケットから携帯を取出し、美羽宛のメールを作成しだした。




───────────
to│美羽
───────────

悪い。今日は飲みに
誘われたから、同僚と
行ってくる。

少し遅くなるかも
しれない。
   ----END----

< 138 / 223 >

この作品をシェア

pagetop