籠のなかの花嫁
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「んで、彼女と何かあったのか?」



帰社後、とある行きつけのバーで二人は飲んでいた。



「・・・・・・・・キス、した」


「あ、そう・・・・・で?」


「それだけだ」


「はぁ?」



ふざけんなと言いたげな若林。


だがその二人の前に現れた人影がそれを押さえた。



「若林様、どうぞ」


「柊さん・・・・・すみません」


出されたカクテルを申し訳なさそうに、受け取る。




静かに飲むバーで騒ぐのはマナー違反。


それを客に不愉快を与えないように諫めるのも、バーテンダーの仕事だと言うこの柊。



彼はこのバーのバーテンダーであるとともに、経営者。


年は二人より10歳ほど上で、ダンディーな印象を与える男性だ。




「豊川様が何かあったんですか?」


「聞いて下さいよ柊さん。コイツ11歳も下の女の子に惚れたんですよ」



“ビックリですよね”と言う若林に対し、柊は微笑みを返すだけ。



「あれ、まさかご存じでした?」


「えぇ。豊川様からお話は聞いておりましたから」



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