籠のなかの花嫁
「それで、何も言わずに出てきちゃったんだ」


「そう」



あれから梨奈に連絡を取った美羽。



梨奈は実家住まいだが、朝早くにも関わらず、快く家に上げてくれた。



そして、昨日のことを話したのだった。




「仕事が上手くいってなくて、苛々してたとかは?」


「分かんない。仕事のことは聞かないから・・・」


「そっか・・・。でもこういう時って大抵、なんだそんなことかってなる方が多いと思うけど?」


「それは梨奈の場合でしょ?」



美羽が突っ込むと、梨奈は苦笑いになった。



事実、梨奈が持ってくる悩みは全て次の日には解決されているものばかりだ。




『昨日彼氏にメールしても全然帰ってこなかった!』


と言えば、実は彼氏の蒼司が、うっかり携帯をサイレントモードにしっぱなしで気付かなかっただけ、とか



『昨日蒼司が車に女の人乗せてた』


と言えば、実はお姉さんだった、とか・・・




「飲んで帰ってきて近寄るなって、意味分かんない・・・」



更にこんなことで悩んでる自分に対してもため息が出る。




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