籠のなかの花嫁
これは、美羽が心の中でいつも思っていたことだった。


だが、それは梨奈によって大きく壊された。



「人間全員が裏切るって誰が言ったのよ。裏切る時にはそれ相応の理由があるし、それに裏切られた方にも原因があるはずでしょ?一方的に自分が被害者だって思うのは間違ってる!」



それに、と梨奈は続ける。



「美羽は人間の感情が固まりのほうがいいわけ?」


「はっ?」


「あたしは嫌よ。人と人が関わりを持つ時に、不安やぶつかりがない方があたしは嫌」



美羽は分からなかった。

梨奈がどうしてそんなことを言うのか。

その不安やぶつかりこそ、美羽が恐れ、人を遠ざける要因だったのだから。



自分が信じても、いつかは離れていくんじゃないか、裏切られるんじゃないか、その不安がいつも美羽の心を暗くする。



「離れていくんじゃないかとかそんな不安を抱いてまで、どうして人と関わらなくちゃいけないの?どうして信頼しなくちゃいけないの?」



どうしても、保険をかけてしまう。



誰かが離れていっても

「あ、やっぱりね。分かってた。離れてくって」

と考えておけば、傷は浅くて済む。




< 149 / 223 >

この作品をシェア

pagetop