籠のなかの花嫁
涙を流しながらの、美羽の小さな囁きはしっかり晴太に届いた。




「ずっと、その言葉が聞きたかった。その言葉が欲しかった」





晴太に言われて気付いた。



愛されなくなったあの時から、あたしは誰かを愛する気持ちも失っていたのかもしれない。


でも、あなたや梨奈のおかげであたしはまた誰かを愛する気持ちを思い出した。


誰かを想う気持ちがこんなに温かいことを忘れていた。




美羽がゆっくり顔を上げた。



そんな美羽の顎に指を当てる晴太。



二人の距離が近づく。



そして、距離がなくなる




瞬間




〜〜♪〜〜♪〜〜〜




家電がなり、美羽は思わず晴太の腕の中から抜け出し、電話を取ってしまった。



「・・・・・イイときに」



晴太は大きく肩を落とした。




「せ、晴太さん。お父様とお母様からです」




しかも、うちの親かよ!



胸中で自分の両親に突っ込み、不機嫌な態度丸出しで電話に出ると、向こうから聞こえてきた言葉に、晴太は目を見開いた。





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