籠のなかの花嫁
そんな俺の気持ちに気付くはずもなく、若林は話を進めていく。



「あれから最近は上手くいってたんだろう?」


「あぁ、いってたさ」




あの時、キスを両親に邪魔された日。


つまり、ようやく俺たちが両想いになった日から今日まで、本当に俺は幸せだった。




─────────────
──────────



『ただいま、美羽』


『ぉ、おかえりなさい、晴太さん』



ぎこちなくも、目を見て小さく笑いながら“おかえりなさい”と言ってくれるようになった。


以前のような冷たさがなくなったんだ。




『授業で分からないとこがあるなら教えてやるぞ』


『じゃぁ・・・ここを』



そう言って、いそいそと教科書を持って隣に座って、俺の話を聞く。



『あぁ、そっか。分かりました。ありがとうございました』



問題が解けると、嬉しそうに笑ってお礼を言うんだ。


その顔に俺は今だになれず、動揺してしまう。




両想いになったとは言え、なかなかすぐに恋人らしくなるわけもなく、まだまだ距離はある。



でも、美羽が俺に笑いかける笑顔が増えたり、一緒に過ごす時間が増えたり、確実に良い方向に向かっている。



< 160 / 223 >

この作品をシェア

pagetop