籠のなかの花嫁
その頃、彼を悩ませる少女もまた、学校で頭を抱えていた。




「なぁにそれ。今まさに幸せ絶頂期のはずの人がため息なんて」


「え?あぁ・・・」



知らず知らずのうちに出たため息を友人に指摘されるが、上の空の美羽。



「今度は何の悩み事ですか?」


「う〜ん・・・実はさぁ」




晴太の悩み事が3日後に対し、美羽の悩み事はすでに明日に迫っている晴太の誕生日のことだった。



あの日、婚約披露パーティーの知らせの電話が晴太にかかってきた後、晴太の母親は美羽には晴太の誕生日を教えてくれたのだ。



“晴太、自分の誕生日のこと、美羽ちゃんに言ってないでしょ?きっと本心では美羽ちゃんに祝ってほしいって思ってるはずなの”



って言ってたけど、本心は溺愛している息子の誕生日を、今年は自分は祝えないから、代わりにあたしが祝えってことだろうけど。




「美羽ってホント皮肉屋!」


「ん?どこが?」


「自覚ナシ?!素直にそのまま受け取ればいいのに、裏を考えようとするじゃん」


「じゃぁ教えてあげる。素直すぎるのも考えものよ?梨奈さん」




あたしだって考えたくて考えてるわけじゃない。


ただ、そういうクセがついちゃってるだけ。




< 162 / 223 >

この作品をシェア

pagetop