籠のなかの花嫁
最初から・・・


晴太さんは、初めて会った時から、あたしを想っていてくれたんだ。


なのにあたしは、晴太さんと正面から向き合うことが出来なかった。




「あたしは、弱い人間です。傷つくのが怖くて晴太さんと向き合えなかった。あなたもまた、あの二人と同様にあたしを閉じ込める籠だと思ってたんです」



そう。

あたしは、亡くなった父と母の娘として、中宮家の者として恥じないように生きたかった。

その気持ちをあの二人は利用した。


父と母の娘として、立派な人間になろうとすればするほど、あの二人に周りは言う。


“お嬢さんは素晴らしいわね”



親子関係ではないと知っていても今育てているのはあの二人だから、周りはそういうのだ。



あたしは、それが嫌でもどうすることも出来ない。



未成年のあたしは、一人では生きていけない。




あの二人は鳥籠だった────






「だけど、あなたは違いました。いつも変わることなくあたしを愛してくれたんですから」




腰にある晴太の腕が強さを増した。





< 196 / 223 >

この作品をシェア

pagetop