籠のなかの花嫁
ところが晴太はそんなのはお構い無し。



「声が大きくて何が悪い。事実を言ったまでだ。そうだろう?・・・俺の美羽」



そう言うと、そのまま美羽は唇を塞がれた。



だが、いつものとは違い連続的に離れては触れ、離れては触れを繰り返した。



何度もされるキスに、美羽は体の力が抜けていくようだった。



「俺は、お前の笑顔が一番好きだが、俺しかさせられないその表情も好きだな」


美羽は返事をする余裕もなく、晴太にもたれかかった。




「・・・・・・・・・・・・意地悪だ」



それを聞いてからクッと笑い、晴太は美羽を支えながら来た道を戻った。











『これで私達は安泰だな』


『そうですね。あの子も晴太さんを上手く誑かしたみたいだし』


『あぁ。』


『子どもが出来るのも時間の問題だろう?そうすれば、離婚の可能性も低くなる』


『ウフフ 美鶴ちゃんが亡くなってあの子だけが残ったときはどうしようかと思ったわ』


『ま、結果的に役に立ったから、良としよう』





控え室から聞こえる会話。



人のことよりも自分のこと。

欲深い人間に、会社の経営なんて出来るわけがない。

笑っていられるのも今のうちだ。

俺がお前らを根底に突き落としてやる。



美羽を支える手に力が入った。




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