籠のなかの花嫁
「美羽、こちらへ・・・」



話の途中で晴太に呼ばれ、美羽は隣に寄り添った。


そのまま晴太は話しだした。




そう。


こんなふうに、隣に寄り添いながら、二人の未来を作っていけば良い。


いつか過去を笑えるぐらい幸せな未来を。


愛する人と─────





一つの鳥籠が、晴太により二重になったと思ったが、それは違った。


晴太は外から美羽を見守っていた同じ鳥だった。


美羽を愛し、頑なに閉ざされた心の門扉を開こうと懸命に働き掛けていたのだ。

いつしか美羽はその働き掛けに、心動かされた。


愛し愛され、2羽の鳥は美しい声で囀る。


だが、どうしても2羽の間には鳥籠がある。


それが、美羽の心をがんじがらめに縛り付けている。





籠から抜け出せなくても、あなたがいつも傍にいてくれれば、あたしは










「この婚約は白紙に戻させて頂きます」











え─────────




















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