籠のなかの花嫁
美羽はハッと顔を上げる。



辺りも騒然としている。



それでも晴太は話を続けた。




「理由は、両親に決められた結婚というのが、腑に落ちないということです」



晴太さん─────────



「確かに、両親によって私達は出会いました。そして愛し合った」



晴太の美羽を引き寄せる腕が力強くなる。



「だから、もう一度、決められた結婚ではなく自分からプロポーズをして、婚約をして結婚したいんです」



それには、会場からも拍手が沸き起こった。



腕の中の美羽は涙を流していた。





ところが、壇上の脇では困惑の色が広がった表情の人物が一人。




それを晴太は一瞥してから、不適な笑みを浮かべながら言い放った。






「中宮さんとは先程話をしまして、会社の契約の方は白紙に戻すことに致しました」


「晴太さん・・・・・?」


「では、これで私の言葉とさせて頂きます。本日は私達二人のために誠にありがとうございました」




会場からは、祝福と困惑の拍手が起こり、二人は壇上から下がった。







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