籠のなかの花嫁
「ですから、当然私も叔父様叔母様を愛していませんし、同情心もありません。私の幸せは晴太さんの傍でしかありません。だから、私は」




“叔父様、叔母様のもとへは一生帰りません”




そういうと、瞳はストンとその場に崩れ落ち、高志もへなへなと壁によしかかった。





「瞳さん。美羽ちゃんにしたあなたの行為は、人としても女としても最低だわ」



瞳は、虚ろな眼を千恵子に向けた。




すると、横から竜郎が数枚の書類を出してきた。



「そうそう、あなたと契約破棄の理由はもう一つありましてね。これ、何だかおわかりですね」



それを目にした高志は、これでもかというほど目を見開いた。




「そ、それは・・・・・」


「あなたの会社での横領、汚職の証拠書類です」


「こんなことをしておいて、よく平気な顔で人前にいれるものだ。神経を疑いますよ」


「中宮さん。あなたがしたことは犯罪ですよ──・・・」






その後、竜郎が手配した警察の手により、隠されていた中宮会社の横領が見つかり、中宮高志は逮捕された。





「もしもあなたにまだ良心が残っているのなら、この13年間美羽がどんな気持ちで生きてきたのかを、よく考えてください。暗い監獄の中でね」



警察に連れていかれる高志の背中に晴太はそう伝えた。




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