籠のなかの花嫁
アレルギーや好き嫌いを聞いておこう。



なぜ美羽がここまで素直な良い娘にしていることには、ある考えがあった。



ずっと反抗的な態度を取っていても、拉致があかない上に、子どもだと舐められる。


それなら、素直に言うことを聞き続ければ、いつかは飽きるというものだ。


面白くないと言って、他の女(ひと)のところへ行ってくれれば、更に儲け物と言いたいが、どうにも遊び人とは思いがたいほどの男だ。


それは期待しない方がいいかもしれない。





「豊川さん、晩ご飯は・・・」



部屋を出てみると晴太の姿はなかった。



書斎にでもいるのだろうか?

それとも、どっか外にでも出かけたのか。

それなら、そのまま何か食べてきてほしい。



そう思いながら、窓から夕日を眺める。



逃げる機会ならいつだってある。

でも、そうしたら計画が全て台無しになる。


こんな、鍵のない籠のなかで、空に憧れて動けないなんて、なんて惨めなんだろう・・・


でも、あたしは我慢する。


惨めだろうが何だろうが、その先にある幸せを掴むために、今はじっとしてる時。




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