籠のなかの花嫁
ガチャッ──────



ドアの音を聞いて振り替えると、晴太が立っていた。



「あ、片付けは済んだか?」


「はい。それで、晩ご飯の準備をしようと思って・・・」



そう言うと、晴太は驚いたのか、目を見開いた。



何か変なこと言った?

それとも作れないとでも思った?



「勝手に台所使われるの、嫌ですか?」



“少しキツくなったかも”と思ったが、晴太の反応は



「いや、作ってもらえると思わなかったから・・・」



と、単純なものだった。



美羽は思わずため息を吐きたくなったが、笑顔を作った。



「お世話になる身ですから、それぐらいさせて下さい」



家族が好きだと言った、美羽の笑顔。


しかし、今では仮面の笑顔。


誰にも触れられないように、近付けさせないように、固く閉じた心の門扉。


そこに覆われたのが、仮面の笑顔だった。



本心で笑える相手なんてここにはいない。

ここにはあたしの幸せなんて、ない。



閉ざされた門扉と、仮面の笑顔を前に、晴太は眉を潜め一言。





「その笑顔、二度と俺に見せるな」





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