籠のなかの花嫁
「だから、もういいですと・・・」


「俺の気が済まないんだよ。それから・・・俺は作り笑顔が嫌だったんだ。」




だから何だっていうの?



苛立ち始める美羽。



そんな美羽に気付くことなく、必死に言葉を探し伝えようとする晴太。



「だからその・・・俺は、本心からの笑顔を見たい。あんな張りついた仮面みたいな笑顔じゃなくて、自然に出る笑顔を」


「・・・・・・・・・・・・・・」



何も言えなかった。


今まで誰にもそんなことを言われたことがなかった美羽。



「俺には、嘘は通じない」



黙ったままの美羽に更に一言付け足す。





嘘は、通じない?


笑わせないで。


勝手に他人と住まわされてあたしがどれだけ迷惑してるか・・・


でもそれを表に出すなんて、子どもみたいなことはしたくない。


この男(ひと)にも必要以上に構われたくない。


だから、必死で本心を隠してるのに、何なの?


嘘は通じないとか・・・



美羽は無意識に膝に置いた拳を握り締めた。



ここで怒りを露にすることも出来る。しかし、それを美羽は選ばなかった。



全ては何事も円滑に運び、計画を成功させるため。



「すみません。初日だから、緊張しているだけなんです」



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