籠のなかの花嫁
放課後─────────・・・


「今日はバイト?」


「そう。頑張ってお金稼いでくるわ」



ニッと笑って親指と人差し指で丸を作る美羽を見て吹き出す梨奈。



「何か金の亡者みたい」


「失礼な人ねぇ!そうじゃなくて“倹・約・家”!分かる?」


「はいはい。倹約家ね〜」


「これだから今のお嬢様方は困るわ」


「あたしはともかく、アンタも十分いいとこのお嬢様じゃん」



あ、しまった────


美羽は両親のことを話すのを嫌うんだった。



美羽の家庭の事情を知っているのは、美羽に関係のある教職員だけ。



友人には誰にも話していない。その為梨奈は、あのおじ夫婦が美羽の実の両親だと思っているのだ。




「・・・ごめんなさい」



以前何気なくした会話で出てきた両親のことで、美羽は酷く機嫌を悪くしたことがあったのだ。



だが、梨奈の思いがわかったのか、美羽は“気にしない”と言って、笑った。




「それじゃぁね」


「うん、また明日」



そう言って、教室を出た美羽。





学校でも、どこでも思い出したくない人達。


両親でもないのに両親のフリをして・・・


両親らしいことなんて、何一つしてくれなかったのに。


でも学生の今は、頼らなければ不便で、面倒なことになる。


早く・・・・・早く


大人になれればいいのに。




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