籠のなかの花嫁
梨奈と別れてから家に向かっているが、家がある場所は人通りが多いため、付けられているのかは全く分からなかった。





ガチャッ


バタン




静かな家にドアの音が響き渡る。



「・・・・・・・・・・・・・」



美羽は引っ越してから“ただいま”と言わなくなった。



どうせ、計画を実行するまでの仮屋同然の家。

いずれは出ていくのだから、“ただいま”は言わない。




そう心に決めたのだ。



美羽の頭を占めるものはただ一つ


“計画”


と言うことだ。



それが叶うのならば、今は何にでも耐えられる。



最初は違和感があって仕方がなかった台所も、今では板に付いた。



慣れれば耐えることも、軽くなる。



しかし、ただ一つ。



どうしても慣れないことがある。






それは、晴太だ。






越してきてからもう3週間以上経つが、どうしても二人で同じ空間にいることは慣れることが出来ない。



だから、朝晩の食事時が美羽の一番辛い時間なのだ。




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