籠のなかの花嫁
───ガチャッ



棚から食器を出していた手が止まった。



1人でいる時間はどうしてこんなに短く感じるんだろう・・・



一つ小さなため息を吐いた。




「ただいま」



そして美羽のいる台所まで来てわざわざ挨拶をする、この意外にこまめな男に笑顔で振り返り



「お帰りなさい」



と声をかけた。




一見すれば、夫婦にも見えなくもない絵になるが、美羽の中には愛情のあの字もなく、あるのは憎しみだけ。




本当に奇妙な同棲だ。




─────────────・・・



晩ご飯が済んだ後。


美羽は晴太の運転する車に乗っていた。



《お前に見せたいものがある》



そう言われ、今にいたるわけだが行き先は知らされていなかった。



「あの、どこに向かってるんですか?」


「・・・行ったらわかる」




内緒ってことか。




窓の外を見ても、辺りは真っ暗で何も見えなかった。



しかし、少しすると海が見えてきた。




海が行き先?




美羽は眉根をひそめた。



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