籠のなかの花嫁
「結婚が決まっている以上、そのうち会うことになる。それが早まるだけの話だ。それに、俺達の仲も気になるらしい」



クスッと笑う晴太は機嫌がいい。



しかし、美羽は全く逆だった。



必死に、自分の気持ちを抑えていた。



“早まるだけ”それは、アンタの都合でしょ?

あたしは違う。

あたしの両親として、あの二人も



「あの、あたしの・・・」


「あぁ、もちろんお前のご両親もいらっしゃるよ。会うのを楽しみにしているそうだ」




楽しみ・・・・・・・!?



とうとう我慢していた思いが抑え切れなくなった。



ガタッ



「美羽?」



美羽は立ち上がると、何も言わず、すぐにその場から自室へ向かった。



「美羽!!」



晴太は追い掛けてドアの前で呼び掛けた。



「美羽・・・どうしたんだ?」


「・・・・・・・・・・・・」


「美羽?・・・・・話してくれ。じゃなきゃ分からない。・・・おい!!」




だが、美羽からの応答は一度もなかった。







ようやく・・・近付けたと思ったのに。


美羽がまた、離れていく。


何に悩んでるんだ?


何が不満なんだ?


俺はそれさえも、聞き出すことが出来ないのか・・・?



会社では優秀だと言われる自分。


しかし、美羽にとっては、非力な男でしかないのかと、悔しさが募る晴太だった。



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