籠のなかの花嫁
そして─────────・・・



「美羽ちゃん、ちょっと」



見合いが終わり、帰ろうとした時美羽は晴太の母親、千恵子に呼ばれた。





「何でしょうか?」



皆から少し離れた場所まで行く。


千恵子は美羽の顔を見ながら、複雑な表情で話し始めた。



「美羽ちゃんには、申し訳ないと思ってるわ」



え?



「まだ高校生で遊びたい盛りでしょう?なのに、結婚なんて・・・」


「・・・・・・・・・・」


「知らない人と勝手に婚約させられて・・・恨まれても仕方ないと思ってるわ」



“でも”と、千恵子は目に涙をためながら美羽に訴えた。



「でも、晴太だけは恨まないであげて。嫌わないであげて」


「千恵子さん・・・」


「初めてなの。晴太がどうしてもとお願いをしてきたのは・・・」


「・・・お願いって?」


「あなたとの結婚よ」




─────────え?




どうやら、美羽は何人かの花嫁候補の一人だったらしく、晴太に写真を見せ、2週間後に



《この子と結婚させてくれ》



と両親に頼んできたらしい。




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